初心者にもよくわかる漫画の描き方【プロットは書いた方が良いよ】
- 作成日: 2025-05-08
- 更新日: 2025-05-09
- カテゴリ: 漫画
漫画の描き方を調査中ですか?
この記事では初心者にもわかりやすいように漫画の描き方を解説します。
筆者は商業誌に投稿経験もある趣味で漫画を描く人間です。
この記事を読めば漫画の描き方がわかります。
では解説していきます。
漫画の描き方、全体像
漫画の描き方は複数の工程にわかれています。
1つ1つの工程は漫画家さんによっては省略する人もいます。
しかし、初心者の方はちゃんとプロットから漫画を描かれたほうがいいです。
漫画の制作の工程は以下になります。
- アイデアを練る
- テーマを決める
- プロットを作る
- ネームを描く
- 原稿を描く
一つ一つ見ていきましょう。
1. アイデアを練る
漫画の元になるアイデアを練るのが最初にやることです。
アイデアの練り方は漫画家さんによってみなまちまちで違いがあります。
しかしここでは一般的な方法を解説します。
アイデアは以下の方法で練ることができます。
- 演繹法
- 帰納法
アイデアを練る「演繹法(えんえきほう)」
演繹法(えんえきほう)というのは思考方法の一種です。
これは出発点となるものを最初に考えて、それからどんどん発展させてアイデアを作っていきます。
たとえば出発点として「猫」を設定しましょう。
そうすると「最初に猫がいる」ということになります。
ここから演繹、発展させると
- 猫がいる
- 猫が通行人に飛び掛かり頭がぶつかり合う
- 猫と通行人の魂が入れ替わる
- 通行人が自分の体を取り戻す(オチ)
など考えることができます。
最初に「1. 猫がいる」から考えます。
そして「猫がいるなら次は何が起こる?」と考えます。
そこで「2. 猫が通行人に飛び掛かり頭がぶつかり合う」と発展させます。
そして「猫と通行人の頭がぶつかり合ったらどうなる?」と考えます。
そこで「3. 猫と通行人の魂が入れ替わる」というアイデアを考えます。
そして「猫と通行人の魂が入れ替わったらどうなる?」と考えます。
最後に「通行人が自分の体を取り戻す(オチ)」と発展させます。
このように「1」から順に数字を増やしていく形でアイデアを考えていきます。
オチを考えるのが一番最後になるのが演繹法の特徴です。
アイデアを練る「帰納法(きのうほう)」
帰納法(きのうほう)という思考方法もあります。
これは最初にオチを考えるのが特徴的な思考法です。
たとえば「猫が世界を救う」というオチを最初に考えます。
そこから「なぜ?」で考えていきます。
- 猫が世界を救う(オチ)
- 猫は特殊部隊のアニマル隊員だった
- 猫の飼い主が魔王にさらわれる
- 魔王が長年の眠りから復活する
最初に「猫が世界を救う」とうオチを考えたら「なぜ猫が世界を救うのか?」と考えます。
そこで「2. 猫は特殊部隊のアニマル隊員だったから」と考えます。
そして「なぜアニマル隊員の猫が世界を救うのか?」と考えます。
そこで「3. 猫の飼い主が魔王にさらわれる」と考えます。
次に「なぜ飼い主が魔王にさらわれるのか?」と考えます。
そこで「4. 魔王が長年の眠りから復活する」という話の始まりを考えます。
このように最初のオチから始まりに向けて思考していくのが帰納法です。
パッとオチを最初に思いついたら、そのオチを説明する形でアイデアを発展させていきます。
ストーリーとしてつじつまが合うようにしていきます。
2. テーマを決める
「テーマ」とは「主題」のことです。
つまり「この漫画で読者に何を伝えたいのか?」というのがテーマです。
私も原稿を投稿してて、編集の方からの手紙で知ったのですが、物語ではこのテーマが非常に大事だと言われています。
良い漫画は読んだ後に何かしらがメッセージとして読者の中に残るものです。
そういったものがテーマです。
先ほどの猫と魂が入れ替わるアイデアだとテーマは何が適当でしょうか。
これはドタバタコメディっぽいアイデアなのでテーマは「猫には油断するな」とかそういうのでもいいでしょう。
大人向けのストーリー漫画とかならテーマは哲学的なものでもいいでしょう。
「愛とは○○だ」とか「生きるとは○○だ」とか。
テーマは物語の背骨に当たるので、これがないと物語がよくわからないものになってしまいます。
1つの物語で読者に伝えたい事を設定して、そのテーマに沿ったプロットを書きましょう。
3. プロットを作る
次にプロットを作ります。
プロットとはストーリーの構造を文章などで書いた物です。
小説でもプロットというものがあり、漫画でも描くことがあります。
私の経験で言うと、ネームの前にプロットを描いた方が漫画の制作は楽になります。
いきなりネームを書いていて上手くいかない方はプロットを書いてみるのがおすすめです。
プロットの段階で、ストーリーの設定やキャラクターなどを考えます。
プロットとストーリ設定やキャラクターはどちらか先に考えた方がいいのか、というのは悩ましい問題です。
私の経験を言うと、これらは並行して考えるのがおすすめです。
プロットを書きながらキャラクターを思いつくこともあるし、キャラクターを考えながらプロットを思いつくこともあります。
交互に行ったり来たりしながらプロットを練っていきます。
プロットの書き方
プロットの書き方は私の知っている方法では2種類あります。
1つは自然文章によるプロット。
2つ目は構造化したプロットです。
- 自然文章によるプロット
- 構造化したプロット
自然文章によるプロット
これは小説のように文章で書いていく方法です。
たとえば先ほどの猫と通行人の魂が入れ替わるアイデアを元にします。
そうすると以下のようなプロットになります。
主人公の猫吉は家のそばで日向ぼっこをしていた。
そこにデートに向かう途中の太郎が現れる。
猫吉は太郎の顔が気に入らず、太郎に飛び掛かってしまう。
猫吉が太郎に飛び掛かると、猫吉と太郎の頭がぶつかってしまう。
すると猫吉と太郎の魂が入れ替わる。
猫吉は太郎の代わりにデートに行くことになるが、太郎は自分の身体を取り戻すために猫の姿で奮闘することになる。
・・・
と言う感じで書いてきます。
小説まで具体的に書きません。あくまで、これは作者がわかればいいものです。
物語がどういう風に進んでいくか文章で考えて書いてきます。
この段階で「猫吉」や「太郎」などのキャラクター、そして「日本」を舞台にしていることなどがわかります。
これらのキャラクターや世界観を並行して考えていきます。
構造化したプロット
構造化したプロットは「起承転結」でプロットを書いていくものです。
起承転結とは
- 起 ... 物語のはじまり
- 承 ... 起を受けて次に進む
- 転 ... 物語の転機
- 結 ... 物語の結末
という構造で物語を考えるものです。
この起承転結を使うとプロットは以下のようになります。
起:猫吉が家の近くで日向ぼっこしている
承:デートに向かう太郎に猫吉が飛び掛かる
転:猫吉と太郎の魂が入れ替わる
結:太郎が自分の体を取り戻す
さらにこのプロットを以下のように構造化します。
起:猫吉が家の近くで日向ぼっこしている
起:猫吉が日向ぼっこしている
承:猫吉は今晩のご飯のことを考える
転:猫吉は腹が減ってきて機嫌が悪くなる
結:猫吉は不機嫌に周りの様子を伺う
承:デートに向かう太郎に猫吉が飛び掛かる
起:幸せそうな顔をした太郎が歩いてくる
承:猫吉は太郎の顔が気に入らず飛び掛かる
転:太郎はびっくりして後ずさる
結:猫吉は何度も太郎に体当たりする
転:猫吉と太郎の魂が入れ替わる
起:猫吉と太郎の頭がぶつかり、魂が入れ替わる
承:お互い困惑する二人
転:猫吉は太郎の体でデートに向かってしまう
結:太郎は猫の姿で猫吉を追いかける
結:太郎が自分の体を取り戻す
起:デートをする猫吉
承:太郎が現れて猫吉に体当たりする
転:太郎と猫吉の魂が入れ替わる
結:太郎が自分の体を取り戻す
起承転結にそれぞれさらに起承転結を入れ子にして構造化します。
そして、その起承転結を埋めていく形でプロットを考えていきます。
この構造化プロットは私はよく使います。
起承転結があるので、プロットを考えるのが楽だからです。
また構造化しているので、ちゃんと話の構造がしっかりする特徴があります。
世界観を考える
プロットの制作と並行して世界観を考えます。
舞台はどこか? 時代はいつか?
などを考えます。
たとえばここで舞台をアメリカにすれば、先ほどの猫吉の話はアメリカが舞台になります。
また時代を昭和にすれば、この話は昭和の話になります。
このように舞台と時代を設定することで物語の世界ががらりと変わります。
世界観としてはイデオロギーも考えるといいかもしれません。
イデオロギーとは資本主義や共産主義のことです。
物語が資本主義社会での話なのか、共産主義社会での話なのか、など、物語に深みが出ます。
もっとも、少年漫画などにはこの設定は必要ないかもしれません。
大人向けですね。
キャラクターを考える
プロットと並行してキャラクターを考えます。
たとえば先ほどの猫吉の話では「猫吉」と「太郎」、それから「太郎のデート相手」が出ました。
猫吉の設定を増やしたり、太郎の設定を増やしたりすると、それに応じてプロットも変化します。
設定を変えた場合はそれに合わせてプロットも変えていきます。
プロットは文章なので、ネームに比べると修正が楽です。
そのため、このプロットの段階でキャラクターをよく考えてプロットを修正していきます。
たとえば太郎の設定に「オカマ」を加えたとします。
そうすると太郎はオカマで、太郎の恋人は男性になります。
そうすると猫吉は男性とデートすることになります。
デートに行く猫吉的にはびっくりですよね。なんだか面白そうな設定です。
こういう感じでキャラクターの設定を変えるとプロットも変化します。
まずベースとなるプロットを考えて、それに世界観やキャラクターなどを含めて修正していき、プロットを練っていきます。
ネームのページ配分を考える
プロットを作ったらネームのページ配分を考えます。
ここでは構造化プロットを例に解説します。
たとえばストーリー漫画として31ページの漫画を描くと仮定します。
そうするとページ数の配分は以下のようになります。
扉は1ページ
起:猫吉が家の近くで日向ぼっこしている(7ページ)
承:デートに向かう太郎に猫吉が飛び掛かる(7ページ)
転:猫吉と太郎の魂が入れ替わる(8ページ)
結:太郎が自分の体を取り戻す(8ページ)
1 + 7 + 7 + 8 + 8 = 31ページ
↑のように大まかなページ配分を決めたら次に構造化したページ配分を考えます。
起:猫吉が家の近くで日向ぼっこしている(7ページ)
起:猫吉が日向ぼっこしている(1ページ)
承:猫吉は今晩のご飯のことを考える(2ページ)
転:猫吉は腹が減ってきて機嫌が悪くなる(2ページ)
結:猫吉は不機嫌に周りの様子を伺う(2ページ)
承:デートに向かう太郎に猫吉が飛び掛かる(7ページ)
起:幸せそうな顔をした太郎が歩いてくる(1ページ)
承:猫吉は太郎の顔が気に入らず飛び掛かる(2ページ)
転:太郎はびっくりして後ずさる(2ページ)
結:猫吉は何度も太郎に体当たりする(2ページ)
転:猫吉と太郎の魂が入れ替わる(8ページ)
起:猫吉と太郎の頭がぶつかり、魂が入れ替わる(2ページ)
承:お互い困惑する二人(2ページ)
転:猫吉は太郎の体でデートに向かってしまう(2ページ)
結:太郎は猫の姿で猫吉を追いかける(2ページ)
結:太郎が自分の体を取り戻す(8ページ)
起:デートをする猫吉(2ページ)
承:太郎が現れて猫吉に体当たりする(2ページ)
転:太郎と猫吉の魂が入れ替わる(2ページ)
結:太郎が自分の体を取り戻す(2ページ)
このようにページ配分を考えることで、それぞれの起承転結を何ページで描いたらいいのかがわかります。
こういった手間をプロットの段階でかけておくと、ネームを書くときに楽ができます。
4. ネームを描く
プロットを書いたら次にネームを描きます。
ネームはコマ割りとセリフを考えるのがおもな目的です。
アナログの場合はコピー用紙やノートなどに、プロットをもとにしてコマ割りとセリフを考えていきます。
ネームは原稿の設計書なので、自分がわかればそれで充分です。
つまり絵も、原稿のレベルで描く必要はありません。
見たことある人もいるかもしれませんが、プロの描くネームも絵はラクガキレベルで適当なものが多いです。
それぐらい手を抜いても、自分がキャラクターなどの状態がわかればそれでOKです。
あるいはネームに文章で、状況を書いておくのも手です。
どういう背景なのかは文章で書いておけば、原稿を書くときに参考に出来ます。
ネームの段階で漫画が面白いかどうかはわかります。
面白くない場合はプロットから練り直しになります。
もし面白くない状態で原稿の作成に進むと、面白くない漫画を数か月かけて描くことになります(こりゃひどい!)。
ネームの段階で面白いかどうかは判断できるようになっておきましょう。
5. 原稿を描く
プロットとネームができたら最後に原稿を描きます。
原稿の制作工程は以下になります。
- 下描きを描く
- 枠線のペン入れ
- 吹き出し、擬音などのペン入れ
- 絵の主線のペン入れ
- ベタ入れ
- 消しゴムかけ
- トーン貼り
5.1 下描きを描く
アナログ原稿の場合はシャーペンや鉛筆で原稿に下描きを描きます。
下描きの書き方も漫画家さんによって違うみたいです。
がりがりと汚く書く人も入れば、消しゴムなどを使って綺麗に描く人もいて、さまざまです。
自分に合った下描きの描き方を模索しましょう。
ちなみに私は線を何度も引いて汚く描くタイプです。
5.2 枠線のペン入れ
枠線を引きます。
擬音などが枠線の上に飛び出ている場合は先に擬音を描いたほうがいいでしょう。
その辺は臨機応変に描きます。
枠線の太さなどを知りたい場合は以下のページをご覧ください。
枠線の作画はデジタルだと自動化することもできます。
当サイトが開発したツールを使えば作画の時間を短縮できます。
詳しくは以下のページをご覧ください。
5.3. 吹き出し、擬音などのペン入れ
吹き出しや擬音にペン入れします。
吹き出しと擬音は絵の前面に来るものです。
そのためキャラクターなどよりは先に描いていきます。
もっとも、キャラクターが前面に来る場合もありますので、その辺も臨機応変に作画します。
5.4. 絵の主線のペン入れ
キャラクターや背景などにペン入れします。
アナログだとGペンやカブラペン、丸ペンなどを使います。
線の太さはキャラクターと背景では変えるようにするといいかもしれません。
そうすると絵が立体的になります。
5.5. ベタ入れ
主線を書いたらベタ入れします。
ベタ入れというのは髪などを黒く塗ることです。
デジタルだとクリック一発でできます。
アナログの場合は筆ペンなどで塗っていきます。
アナログではベタ入れをすると原稿が水分を吸って多少たわみますので、ベタ入れのタイミングは各自で調整してください。
5.6. 消しゴムかけ
下描きで描いたシャーペンや鉛筆の線を消しゴムで消していきます。
アナログでは消しカスが大量に出るので、ゴミ箱を用意しておきましょう。
5.7. トーン貼り
消しゴムをかけたら最後にスクリーントーンを貼ります。
アナログではトーンは高いので、私は使っていませんでした。
デジタルでは自作したトーンを使っています。
トーンワークは熟練の技が必要ですので、気長に習得しましょう。
おわりに
これで漫画は完成です。
なんと漫画一本描くのにこれだけの工程があります。
しかし、この工程は絶対やらなくてはいけないものではありません。
自分の制作スタイルを模索するようにしてください。
筆者のおすすめとしてはプロットは書いた方がいいです。
プロットを書いた方が修正が楽だからです。
以上です。
参考になれば幸いです。